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販売価格の拘束に関するトラブル - フランチャイズトラブル事例

販売価格の拘束に関するトラブル

X氏は、フランチャイザーであるY社とフランチャイズ契約を締結し、小売店のフランチャイズ営業を開始しました。

フランチャイズ契約書上、Y社は、X氏が経営する店舗で販売する商品の品揃え及び販売価格を決めることとされています。また、フランチャイズ契約書上、X氏は、Y社から商品を直接仕入れることとされています。

X氏は、当初、Y社の指示に従った価格で商品の販売を行っていましたが、X店近隣に競合店が出店したことや、顧客の趣向など地域の実情に合わせ、商品によっては販売価格をもう少し値下げした方が利益が上がると考えるようになりました。

そのため、X氏は、Y社に対し、X店で販売する商品の一部に関して値下げをすることを提案しましたが、Y社には全く聞き入れてもらえませんでした。

このように、Y社が一方的に決めた販売価格を加盟店に対し絶対的なものとして押しつけることは、法律上何も問題にならないのでしょうか。

解説

1 販売価格の拘束の問題

FC本部としては、フランチャイズチェーン全体のイメージの維持、営業戦略の観点から、加盟店に対し、経営指導の一環として、FC本部が決定したチェーン全体共通の商品販売価格に従うよう要請することが一般的です。

これに対し、加盟店側としては、同種店舗との競争や、その地域の消費者趣向等を考え、商品について独自の価格設定を希望する場合があります。

このような場合、販売価格の設定という場面においてFC本部と加盟店双方の要望が対立することになり、法律的には、本部が加盟店に対し販売する商品等の価格を拘束することが、再販売価格の拘束行為として、独占禁止法違反(第2条9項第4号)にあたり違法にならないかということが問題となります。

2 公正取引委員会の考え方

上記の問題については、公正取引委員会作成のガイドラインである「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」が、次のような見解を示しています。

 「販売価格については、統一的営業・消費者の選択基準の明示の観点から、必要に応じて希望価格の提示は許容される。しかし、加盟者が地域市場の実情に応じて販売価格を設定しなければならない場合や売れ残り商品等について値下げしなければならない場合などもあることから、本部が加盟者に商品を供給している場合、加盟者の販売価格(再販売価格)を拘束することは、原則として独占禁止法第2条第9項第4号(再販売価格の拘束)に該当する。また、本部が加盟者に商品を直接供給していない場合であっても、加盟者が供給する商品または役務の価格を不当に拘束する場合は、一般指定の第12項(拘束条件付取引)に該当することとなり、これについては、地域市場の状況、本部の販売価格への関与の状況等を総合勘案して判断される。」

以上のような考え方によれば、FC本部が加盟店に対し商品を供給している場合、加盟店の販売価格を拘束することは、原則として、再販売価格の拘束(独占禁止法第2条第9項第4号)、または拘束条件付取引(一般指定の第12項)に該当するということになります(但し、独占禁止法は、「正当な理由」があれば再販売価格の拘束も許されると規定しています。)。

そして、上記に該当し独占禁止法に違反する行為は、公正取引委員会による排除措置命令や課徴金納付命令等の対象となり得ます。

3 独占禁止法に違反する場合の私法上の効力

もっとも、販売価格の拘束が独占禁止法に抵触する場合であっても、その違反行為は公法上違法となりますが、これが直ちに私法上も違法となるものではないというのが一般的見解です。

このため、どのような場合に独禁法違反の行為が私法上も違法になるのかということが問題になりますが、この点に関しては、例えば次のような裁判例が存在します。

・東京地方裁判所八王子支部平成13年9月6日付判決

 「独占禁止法は、原則的には、競争条件の維持をその立法目的とするものであり、違法行為による被害者の直接的な救済を目的とするものではないから、同法に違反した行為が直ちに司法上の不法行為に該当するとはいえない。しかし、事業者は、自由な競争市場においてその営業を行う利益を有しているのであるから、独占禁止法違反行為が、特定の事業者の上記利益を侵害するものである場合は、特段の事情のない限り、上記行為は私法上も違法であるというべきであり、独占禁止法違反行為によって損害を受けた事業者は、違反行為を行った事業者又は事業者団体に対し、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求をすることができると解するのが相当である」

・東京高等裁判所平成9年7月31日付判決

(独占禁止法違反の行為は)「違反行為の目的、その態様、違法性の強弱、その明確性の程度等に照らして、当該行為を有効として独占禁止法の規定する措置に委ねたのでは、その目的が十分に達せられない場合には、公序良俗に違反するものとして民法90条により無効となる」

4 本件について

本件では、X氏は、Y社から商品を仕入れ、さらに、消費者への販売価格についてもY社から一方的に決められていますので、上記公正取引委員会の考え方からすると、Y社による再販売価格の拘束は独占禁止法に違反する可能性があります。

したがって、X氏の対応としては、まず、Y社に対し上記の点を指摘して、X氏の自由な価格設定を認めるよう直接交渉を行うことが考えられますし、公正取引委員会に対し、Y社の行為が独占禁止法に違反するものであることを申告することも考えられるでしょう。

さらに、販売価格の拘束について、裁判上で、上記3のような考え方を参考に、価格拘束行為の無効や従前の価格拘束行為によって生じた損害の賠償を請求することも検討することになります。

【参考資料】

平成14年4月24日「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(改正:平成22年1月1日、平成23年6月23日) 

関連裁判例

東京地方裁判所八王子支部平成13年9月6日付判決

(不動産鑑定士協会であって独占禁止法2条2項所定の事業者団体であるYへの入会においては、入会要件たる推薦制が、事実上、新規の不動産鑑定業者の参入を阻害する手段として用いられており、Yが、

会員2名の推薦を入会の要件として、判決認定事実のもとにおいてXのYへの入会を1年2か月近く遅らせたのは、Yが設置されている県内の不動産鑑定業者に係る事業分野における事業者の数を制限するも
のとして、独占禁止法で禁じられている一定の事業分野における事業者数の制限(8条1項3号)に違反する。)

東京高等裁判所平成9年7月31日付判決

(特定のメーカーの化粧品の販売業者と小売業者との間に継続的供給契約において定められた、小売業者に対し、いわゆるカウンセリング販売を実施し卸売販売を行わないことを義務付ける約定は、右約定が当該化粧品に対する顧客の信頼の維持等の点で一応の合理性を有すると認められるなど判示の事情の下においては、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律一九条、二条九項四号に違反するとはいえない。)

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