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商圏保護義務違反に関するトラブル - フランチャイズトラブル事例

モデルケース

 私(X)は、フランチャイザー(フランチャイズ本部)であるY社とフランチャイズ契約を締結し、以降、ファミリーレストランのフランチャイズ営業を行っております。
 当初、私が経営する店舗(X店)は、近隣に料理店自体が少ないこともあり、営業開始後から順調に売上をのばしてきました。
 ところが、ある日、私に何の連絡もなく、X店の300メール以内の地域において、本フランチャイズチェーンの加盟店(Z店)が開店することになりました。
 Z店のオープン後、X店の売上が徐々に落ち始め、半年経ったX店の現在の売上は、Z店のオープン前と比べ半分以下にまで至っている状況です。
 このような場合、Y社に対し何か責任追及することは出来ないのでしょうか。 

解説

1 商圏保護条項が規定されている場合

(1) 商圏保護条項の意味
フランチャイズ契約書においては、例えば以下のように、フランチャイジーの営業地域を明記し、その営業地域の近隣において、他のフランチャイジーもしくはフランチャイザーの出店を禁止する条項(商圏保護条項)が設けられていることがよくみられます。

 「X(フランチャイジー)の承諾無き限り、Y社(フランチャイザー)は、Xの店舗の500メートル以内の場所において、自らまたは第三者をして本フランチャイズチェーンに属する店舗を出店することが出来ない」

このような商圏保護条項によって、フランチャイジーには当該商圏での営業の保護が与えられ、フランチャイズ・システム全体としても流通の合理化が図られるなどの利点があると考えられています。

(2) 商圏保護義務違反について

商圏保護条項によって、フランチャイズ契約上、加盟店は商圏の保護を受けることになり、逆に本部は加盟店に対し商圏を保護する義務を負うことになります。
その結果、本部が、この義務に違反した場合、契約上の債務不履行責任が問われることになります。
具体的には、既存の加盟店の商圏内で他の加盟店が出店することを本部が許諾したような場合には、既存の加盟店は本部に対し商圏保護義務違反状態の是正を促すことが出来ますし、本部が全く是正しようとしない場合には、債務不履行に基づく損害賠償請求やフランチャイズ契約の解除を請求することが考えられます。
もっとも、商圏保護条項は、業種等によって内容や程度にも違いがあるため、その条項を具体的に確認した上で、商圏保護に関する義務の存否・内容及びフランチャイザーの出店等が同条項に違反するものかどうかを検討する必要があります。

2 商圏保護条項が規定されていない場合

それでは、フランチャイズ契約書上に商圏保護条項がなければ、フランチャイジーの商圏は一切保護されないのでしょうか。
この点、原則としては、契約上明確にフランチャイジーに商圏の保護を与えると規定されていない以上、フランチャイザーとしては当該フランチャイジーが営業する地域においても、新規出店することは自由であるというのが一般的な考え方と言えます。
もっとも、フランチャイザーが、具体的な出店に際して、その地域のフランチャイジーがフランチャイズ契約から利益を得る可能性を失ってしまうことが予見されたにもかかわらず、フランチャイザーがその点に何ら配慮せずに出店したような場合には、その行為は権利濫用ないしは信義則違反となり得るという見解もあります。
すなわち、フランチャイズ契約は、継続的契約関係を前提に、フランチャイザーとフランチャイジーの「相互繁栄」を共通の目的としており、両契約当事者の高度の信頼関係から成り立っています。このことからすば、仮にフランチャイズ契約上商圏を保護する明確な規定がないとしても、フランチャイジーが契約上約束されたその地域・場所において安定的に利益をあげられるという期待は保護されるべきであって、そのような期待を契約当事者であるフランチャイザーが一方的に害するような行為をとることは、フランチャイズ契約上予定されておらず、信義則上許されないはずだからです。
このような見解によれば、フランチャイザーが、何らの配慮もせず直営店や加盟店を出店することにより、契約上予定されたフランチャイジーの商圏保護等への期待を害したといえる場合は、当該フランチャイジーは権利濫用ないしは信義則違反を理由にフランチャイザーに対し損害賠償請求等をすることが考えられます。

3 本件の場合
本件において、フランチャイズ契約書上、Xの独占的な出店権を付与する商圏保護条項があるならば、Xは、自らの承諾もなくZ店の出店を許可したY社に対し、本件フランチャイズ契約上の商圏保護義務違反(債務不履行)に基づく責任を問うことが可能となります。
また、仮にフランチャイズ契約書上、Xの商圏を保護する条項がなかったとしても、Y社はZ店の出店の際にXに対し何の配慮もしていないことや、X店の売上が極端に落ちていること等からすれば、その他の具体的事情によっては、Xは権利濫用ないしは信義則違反を理由にY社に対し責任を問うことが考えられます。 

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