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不当な更新拒絶に関するトラブル - フランチャイズトラブル事例

不当な更新拒絶に関するトラブル

私は、フランチャイズシステムで運営される学習塾A塾を全国に展開しているA社との間で、フランチャイズ加盟契約を締結し、A塾□□校を開校しました。A塾フランチャイズに加盟し、A塾□□校を開校するにあたり、A社へ支払う加盟金、教室用建物の建設、A社が独自に導入している通信システムに適応した設備の設置、その他の設備や備品の設置等の費用のため、それまでの貯蓄を全て使い、さらに最長20年間の長期借入も行い、総額3000万円程度を支出しました。
その後、A塾□□校は、高校のすぐ近くに所在していることもあって、生徒の集まりもよく、私は順調にA塾□□校を経営していました。
しかし、A社とのA塾フランチャイズ加盟契約締結から2年と5ヶ月が経過したある日、A社より私に対し、突如、同契約の更新を拒絶する旨が記載された書面が届きました。

なお、A塾フランチャイズ加盟契約書には、「本件契約の有効期間は、本件契約締結の日から満3年間とする。契約期間満了の6ヶ月前までに当事者のいずれからも書面による更新拒絶の意思表示がない場合は、本件契約はさらに3年間自動的に更新されるものとし、それ以後も同様とする。」と書かれていました。 
確かに、契約書には上記のように書いてありますが、A社との間では、A塾フランチャイズ契約を自動的に更新し、長期間契約を継続することが前提となっていて、だからこそ、私も長期の借入まで行い、A社独自の情報システムに適応した設備の設置等のために多額の費用を支出したのです。
そして、私が知っている限り、A塾フランチャイズに加盟している他の教室は、どこも契約が自動更新されており、3年で契約が終了したという話しは聞いたことがありません。
このままですと、契約締結から3年経過した後は、A社からの情報システムによる情報の配信や、教材の供給が停止されてしまい、授業を行うこともできなくなってしまうと思います。 
今後もA塾フランチャイズ契約を継続できるようにするために、私はA社に対して、何かできることはないでしょうか。

解説

1.更新拒絶による契約の終了が認められるか否かについて

(1)更新拒絶による契約の終了に関する考え方

フランチャイズ契約において、更新を拒絶して契約を終了させることを認めるか否かについては、大きく分けて以下の二つの見解が存在し、裁判例によって判断が分かれているところであります。

ア. 私人間における契約自由の原則を重視し、有効期間が予め定められているフランチャイズ契約において、当事者が更新を拒絶するのは自由であり、特段の事情がない限り、原則として期間の満了とともに契約が終了するという見解。
イ. フランチャイジー側の投下資本回収の機会を保護すること等を重視し、一定の具体的事情の下において、契約を更新しないで終了させるには、当事者双方の公平の見地から判断して、「契約を継続し難いやむを得ざる事由」が必要であるとし、更新拒絶による契約の終了に一定の制約を課する見解。

(2)更新拒絶による契約の終了が制限される場合

そこで、相談者は、上記②の見解を前提に、相談例においても、更新拒絶による契約の終了は制限されるべきであることを主張することが考えられます。
そして、更新拒絶による契約の終了が制限されるか否かは、具体的には、フランチャイズ契約成立の経緯、内容を総合的に考慮し、契約期間の長短も含めて契約終了に関する特約の内容を検討することにより判断されています。
したがって、相談例においては、A社と相談者との間で、長期間契約を継続することを前提に、相談者がA社独自の情報配信システムを設置していること、3年の契約期間では相談者が投下資本を回収することができないこと、他の加盟店は3年で契約を終了していないこと等の事情から、A塾フランチャイズ契約書における契約終了に関する規定は、自動更新に重点を置いた規定であり、3年の契約期間は契約内容を再検討すべき期間として設けられているに過ぎないなどと主張することが考えられます。

(3)契約を継続し難いやむを得ざる事由について

上記(2)のような主張により、更新拒絶による契約の終了を制限することが認められるとすると、次に、相談例において、「契約を継続し難いやむを得ざる事由」が存在せず、更新拒絶が無効であることを主張することになります。
具体的には、例えば、A社が、相談者に何らかの契約違反があること等を更新拒絶の根拠として主張している場合には、相談者が、そのような契約違反を行っていないこと、あるいは、軽微な契約違反が存在するとしても、それはA社との信頼関係を破壊するものとまでは認められないこと等を主張立証し、「契約を継続し難いやむを得ざる事由」が存在しないことを主張していくこととなります。

(4)まとめ

以上のとおり、具体的事実関係のもとで、更新拒絶による契約の終了を制限すべき場合であり、さらに、「契約を継続し難いやむを得ざる事由」が存在しないことが認められれば、相談例においても、フランチャイズ契約の継続が認められる可能性があります。

 

2.取り得る手続きについて

(1)仮処分の申立

相談例の場合、このまま契約締結から3年が経過してしまうと、相談者はA塾□□校で生徒に対し授業を提供することができなくなってしまうため、A塾□□校では大きな混乱が生じ、相談者は著しい損害を受けることになってしまいます。
そこで、3年が経過してしまう前に、相談者が、A塾フランチャイズ加盟契約に基づく加盟店の権利を有する地位にあることについて、仮の地位を定める仮処分を申し立てることが考えられます。
仮処分が認められるためには、被保全権利の存在(申立人に、保全すべき権利が存在すること)と、保全の必要性を疎明する必要があり、被保全権利として、A社による更新拒絶が認められず、相談者がA塾フランチャイズ契約に基づく権利を有すること、保全の必要性として、相談者に回復し難い著しい損害が生じることを主張していくことになります。

(2)訴訟の提起

上記仮処分の申立は、あくまで仮に地位を定めるために申立であるので、保全命令が発せられた場合でも、その後、被保全権利の存在を確定させるためには、A塾フランチャイズ契約に基づく権利を有することの確認訴訟等の裁判を行う必要があります。

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