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管轄合意条項が「適用されない」と判断された事案 - 東京地裁平成23年9月16日決定

事案の要旨

 基本事件は、被告が、原告に対し、フランチャイズ事業の売上予測等について不適切な説明を行ってフランチャイズ契約を締結させ、多額の金銭を支出させるなどしたことを理由に、原告が東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起した事案である。
 本件は、同基本事件において、被告が京都地方裁判所への移送を求めて移送申立を行ったものである。
 なお、本件フランチャイズ契約書には、
「本契約の諸取引に関し、訴訟の必要が生じた場合、京都地方裁判所を裁判管轄とすることに合意した。」
との管轄合意条項が設けられていた。
 

決定内容の要旨

 東京地方裁判所民事第50部合議係は、上記申立を却下し、東京地方裁判所において基本事件の審理を行う旨判断した。
 その理由は、要旨、以下のとおりである。

1.(原告が権利侵害行為として主張する)被告の勧誘行為は、管轄合意条項にいう「本契約の諸取引」には含まれない。それゆえ、本件管轄合意条項は適用されない。

2.被告が予備的に主張する移送申立(民事訴訟法17条)にも理由がない。

解説

 管轄合意条項では、フランチャイザーの本社に近い地方裁判所が管轄とされるのが通常である。それゆえ、遠隔地に居住するフランチャイジーが訴訟を提起する場合には、交通費等の負担を余儀なくされることが多かったと思われる。
 このような中、本件決定は、管轄合意条項の適用を否定したものであり、その意味で重要な先例となり得る。
 本件決定は、原告の指摘した近時の最高裁判例(平成23年4月22日判決)との整合性にも配慮しており、極めて妥当なものと言える。

 


 

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