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コンビニエンスストアの見切り販売妨害と優越的地位の濫用 - 東京高等裁判所平成25年8月30日判決

事案の要旨

 コンビニエンスストアのフランチャイズ加盟者4名が原告となり、被告本部に対して、その従業員によりデイリー商品(弁当・サンドイッチ・おにぎりなど)の見切り販売(販売期限が迫り売れ残っている商品の値段を下げて販売すること)を妨害されたとして、妨害期間中に生じた損害の賠償を求めた事案。 

判断内容の要旨

 判決は、被告が加盟店に対し、見切り販売を勧めずに、できる限り推奨価格を維持して販売することを助言指導するにどとまる場合までが違反行為となるものではないが、加盟店は、被告の推奨価格による販売を強制されず、自己の判断で商品の販売価格を決定することが保障されているから、デイリー商品を推奨価格で販売するよう指導助言する域を超えて、見切り販売が加盟契約に違反する行為であると指摘し、あるいは、見切り販売を行えば加盟契約の更新ができなくなると申し向けるなどして、経営上の判断に影響を及ぼす事実上の強制を加え、これにより加盟店オーナーが有する商品の価格決定権の行使が妨げられ、見切り販売の取りやめを余儀なくさせていると評価できる場合には、本件排除措置命令の認定した違反行為に含まれるとみるのが相当であるとした。
そして、判決は、「被告は、加盟店オーナーに対しては、一貫して、単品管理の徹底を勧める一方で、デイリー商品についても推奨価格を維持して販売することを指導、助言しているのであり、被告のシステムマニュアル、被告のレジ・会計システム、被告による廃棄に関する説明、被告によるブランドイメージの強調と相まって、原告らとしては、開店当初の時点から、デイリー商品の見切り販売について嫌忌されているという認識が相当程度強固となっていたと推認される。したがって、
被告が、原告らに対し、上記の販売システムに関する説明、指導の域を超えて、具体的にデイリー商品の値下げはできない又は禁止されているなどと述べた場合には、見切り販売の実施の可否につき、これをしてはならないとの強い心理的な強制を受けるものであり、一旦生じたこのような心理状態は、被告から明示的に訂正されなければ、そのまま継続し、自己の店舗の経営に関する判断としても、見切り販売の実施を見合わせざるを得ないまま期間が経過していくことが通常であると考えられる」と述べる。
その上で、判決は個別の原告について被告の違反行為を認定し、各原告について100万円から600万円の損害賠償を認めた。
 

解説

平成21年6月に公正取引委員会が被告本部に対し、見切り販売の妨害を行ったとして独占禁止法に基づく排除措置命令(優越的な地位の濫用による不公正な取引方法)を行ったことを契機として、独占禁止法25条に基づき提起された訴訟であった。このため、通常の損害賠償訴訟と異なり、東京高等裁判所が第一審の管轄裁判所となっている。
本判決は、被告による販売システムの説明自体が、加盟者である原告らに対し、被告がデイリー商品の見切り販売を嫌忌しているという認識を強固に抱かせるものであったということを前提に、 そのような状況のもとでは、具体的にデイリー商品の値下げはできない又は禁止されているという発言をすること自体が、加盟店オーナーに対し見切り販売をしてはならないという心理的強制を加えるものであると述べている。このような判断は、巨大なフランチャイズ本部を前にした個人オーナーの立場を実態に即して正しく理解しているものであるといえる。
フランチャイズ契約における独占禁止法上の問題点に関しては、公正取引委員会作成の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(いわゆるフランチャイズ・ガイドライン)が参考になる。

 

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