フランチャイズ問題情報.com > フランチャイズ訴訟判例分析 >  大阪地方裁判所平成22年5月12日判決

大阪地方裁判所平成22年5月12日判決

事案の要旨

  1. (1) Xは、フランチャイズ本部であるYとの間でフランチャイズ契約を締結し、「家族で楽しいスーパー洗車場」加盟店の営業を開始した。
  2. (2) フランチャイズ契約締結前、Yは、独自の立地評価を基に、本件店舗の売上予測値として、平均売上月額413万5000円を提示していたが、Xの売上実績は、Yの売上予測値と乖離するものであった(平成19年について平均売上月額214万4241円)。
  3. (3) Xは、フランチャイズ契約締結前にYの提供した情報(売上予測等)が、客観性・合理性を欠いていること(情報提供義務違反)等を主張し、Yに対する損害賠償請求訴訟を提起した。
  4. (4) これに対して、Yは、フランチャイズ契約書上には、契約終了後に加盟店が競業を行うことを禁止する旨の条項(競業禁止条項)が設けられていたところ、Xがフランチャイズ契約終了後に開始した「ノーブラシ洗車場」の営業が上記の競業禁止条項に違反する旨主張し、Xに対して、営業差止、及び損害賠償を請求した。

判断内容の要旨

大阪地方裁判所は、Xの請求を認容し、Yの請求を棄却した。その理由について、同裁判所は、要旨、以下のとおり判示している。

  • ・Xは、店舗の開設・運営のため多額の費用を投じており、また、Yのフランチャイズ・チェーンに盟後、毎月営業損失を出していることなどから、投下資本回収ができていない。
  • ・Yが本件店舗の商圏を維持しなければ重大な不利益を受けるとは言い難い。
  • ・そもそも、Xが本件店舗に多額の費用を投資したことは、Yによる情報提供義務に違反する勧誘行為(客観性を欠く売上予測値の提示等)が契機となっている。

以上のことからすれば、Xに競業避止義務を負わせて投下資本の回収を事実上困難にすることは、信義則に反し許されない。

解説 

このように、大阪地方裁判所は、Xによる「ノーブラシ洗車場」の営業継続を認めた。
信義則による主張制限の考慮要素として、「投下資本回収の必要性という加盟店側の事情」、「当該商圏を喪失することよる不利益が重大ではないというフランチャイズ本部側の事情」、「加盟店が競業行為を開始するに至った経緯」という要素を挙げている点は参考になる。
また、投下資本の回収が加盟店にとって死活問題であることや、競業避止義務条項が加盟店の営業の自由を著しく制限するものであることなどに鑑みれば、上記裁判例の結論は極めて常識的なものと思われる。

 

call.png