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平成21年12月25日東京高裁判決 「まいどおおきに食堂事件」

事案の要旨

Y1は、大阪府を中心に、「B食堂」などの名称で多数の大衆的な食堂を直営で経営していたところ、Y2と提携し、直営店方式及びフランチャイズ方式を組み合わせた食堂チェーンを全国展開することに着手し、Y2は、Y1の委託を受けて加盟店募集業務及びスーパーバイジング業務を行っていた。

Y1が加盟店との間で締結するFC契約の標準的な内容は、概要、以下のようなものであった。

  • Y1が、加盟店に対し、所定の区域内で、「A家B食堂」の名称で店舗を開店する権限を付与する。
  • 加盟店は、契約締結の日から11ヶ月以内に、所定の区域内で、自己の責任と費用負担により開店場所を確保する。
  • 加盟店は、契約締結時に所定の加盟金(500万円~800万円)を支払い、この加盟金は理由の如何や契約店舗の開設又は営業開始の有無を問わず、一切返金しない。
  • 契約締結後11ヶ月以内に開店場所が確定せず、又は契約店舗の開店もしくは契約店舗建築の着工に至らない場合には、Y1は、本契約を無催告解除できる。
  • 加盟店は、加盟店の売上月額の6%をロイヤリティーとして支払う。

Y1の展開するフランチャイズチェーンの加盟店となったX1ないしX3の3社は、Y1との間のFC契約は、Y1及びY2よる「出店は容易である」などとの虚偽の説明により締結されたものであり、このようなY1及びY2の行為は詐欺による不法行為に該当し、あるいは、同契約は公序良俗に反し無効であると主張して、Y1及びY2に対し、共同不法行為に基づく損害賠償請求、Y1に対する加盟金等の不当利得返還請求をし、さらに、Y1に対する経営指導義務違反の債務不履行による損害賠償請求、Y2に対する不法行為に基づく同額の損害賠償請求を行う訴えを提起した。

これに対し、Y1は、X1ないしX3に対し、X1らの脱退後の食堂運営がFC契約で定めた競業避止義務に違反するとして、営業差し止め及び違約金の支払いを求める反訴を提起した。

一審判決は、X1らの本訴請求を全部棄却し、Y1の反訴請求の一部を認容したため、X1らが控訴した。 

判断内容の要旨

本判決は、原判決を変更し、X1らのY1及びY2に対する共同不法行為による損害賠償請求、Y1に対する不当利得返還請求、及びY1に対する経営指導義務違反の債務不履行に基づく損害賠償請求の一部をそれぞれ認容し、Y1の反訴請求を全部棄却した。

本判決の判事内容の要旨は、以下のとおりである。

(1) 共同不法行為による損害賠償請求(Y1に対する不当利得返還請求)について

Y1及びY2は、東京都内における外食産業用店舗物件の確保が困難であることを知りながら、共同の方針として、本件FC契約の締結勧誘の際には、このような事実を告げず、逆に物件の確保は容易であるとの説明を行うことを定め、この方針に沿ってX1らにも説明を行い、X1らに物件の確保が容易であると誤信させて契約を締結させた。

11ヶ月以内に店舗を開店できない場合には支払った加盟金は没収されるという契約条項になっているのであるから、店舗物件の確保が困難であることを知っていれば、加盟店側は契約を締結しないのが通常であり、Y1らはそのことを知りながらX1らを上記のとおり誤信させているのであるから、Y1らの勧誘行為は詐欺に該当する違法行為である。

本件FC契約のうち、X1らが契約締結時に詐取されたも同然の加盟金及び加盟保証金の支払義務を定めた部分は、公序良俗に反するものとして無効である。

(2) 経営指導義務違反について

Y1は、X1らに対して、経営指導について専門性を有するSVを臨店させて加盟店の経営指導を行う債務を負っていた。

しかしながら、Y1は、最初から専門性のあるSVの即戦力採用も社内教育も十分に行わず、加盟店の多くが専門性の乏しいSVによる臨店しか受けることができない状態を継続させた。このような事実は、Y1の経営指導義務の債務不履行に該当し、これによりX1らに損害が生じたことは明らかであるから、Y1はこの損害(利益の減少又は損失の増加)を賠償する義務を負う。

(3) 反訴請求について

Y1が、X1らに対して、本件フランチャイズ契約の終了後も競業避止条項を適用して、競業避止義務の履行を求めて差止請求をしたり、競業避止義務の不履行による違約金を請求したりすることは、Y1らが詐欺的行為によって本件FC契約の締結をX1らに勧誘し、かつ、フランチャイズとしての経営指導を行わず、X1らがノウハウをほとんど受けていないという経緯に照らすと、信義誠実の原則に違反し、権利の濫用であって、許されないものというべきである。

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