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平成18年1月31日福岡高裁判決  「ポプラ事件」

事案の要旨

X1・X2夫婦は、コンビニエンスストアのチェーン店を展開しているYとの間でコンビニエンスストア・フランチャイズ契約を締結した。その際、Yの担当者は、損益分岐点の記載された事業計画書は交付したが、売上予測は伝えなかった(なお、Yによる売上予測は損益分岐点をはるかに下回るものだった。)。約2年3か月後、コンビニ店は売上が上がらずに閉店した。
X1・X2は、Yに契約締結時の情報提供義務違反があるとして損害賠償を請求したが、Yは、売上予測は困難であり誤解を招くから開示義務はないなどとしてその責任を争った。
第一審は、契約当事者はX1のみであるとしてX2の請求は棄却したが、契約締結時におけるYの情報提供義務違反を認め、X1の請求を一部認容した。
これに対しX1・X2が控訴し、YもX1との関係で敗訴した部分を不服として控訴した。 

判断内容の要旨

本判決は、概ね次のように述べ、Yの情報提供義務違反に基づくX1の損害を認めた。またY2についても実質的共同経営者であるとして、Yの義務違反により心身を疲弊させられたことの慰謝料を認めた。(過失相殺2割5分)
ア) フランチャイザーには、フランチャイジーになろうとする者に対する信義則上の保護義務としての情報提供義務がある。売上予測は、それが損益分岐点を上回るかどうかが、契約締結の決め手となる最重要の情報である。売上予測を開示しなかったYには情報提供義務違反がある。
イ) 実質的には、本件店舗はX1・X2夫婦の共同経営であり、本件契約上のフランチャイジーもX1・X2夫婦であるものと見るべきでる。単に契約上の便宜として、X1が契約当事者、X2はその連帯保証人とされたにすぎない。Yは、その情報提供義務違反により心身を疲弊させたX2に対しても損害賠償責任を負う。 

解説

(1)フランチャイズ本部が負う情報提供義務について
本件裁判例は、フランチャイズ本部が加盟希望者に対して、「できる限り正確な」情報を提供すべき法的義務(信義則上の情報提供義務)を負うものと認定した点で、注目すべきものと言えます。

(2)過失相殺について
一般に、情報提供義務違反の裁判例においては、加盟希望者にも一定の落ち度(過失)があることを抽象的に指摘して、損害賠償額を一部認容するに留める(いわゆる「過失相殺」を行う)判断が見られます。
この点、本裁判例は、フランチャイズ本部の情報提供義務違反の内容・程度を具体的に分析し、フランチャイズ本部の情報提供義務違反によって生じたX1らの損害額のうち、75%の部分を認容しています(X1らの過失割合が4分の1、つまり25%であることから、75%分が認容されたわけです)。

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