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平成13年7月5日千葉地裁判決 「ローソン千葉事件」

事案の要旨

本件は、被告Yとの間でコンビニ経営に関するフランチャイズ契約を締結した原告3名(Xら)が、当該フランチャイズ契約は無効である、Yが信義則上の説明義務を果たさなかったことは不法行為に該当し、また、契約上の説明義務に違反していたなどと主張して、損害賠償等を請求した事案である。
これに対し、Yは、Xら3名に対し、Xらの債務不履行を理由に各フランチャイズ契約を解除したとして、Xら及びその連帯保証人に違約金等の支払を求めた。 

判断内容の要旨

裁判所は、まず、「フランチャイズ契約を締結するに当たり、フランチャイザーはフランチャイジーになろうとする者に対してできるだけ正確な知識や情報を提供する信義則上の義務、少なくとも不正確な知識や情報を与えること等により契約締結に関する判断を誤らせないよう注意する信義則上に義務を負担していると解される」との判断を示した。
その上で、裁判所は、本件において、Yの担当者が、経費の増大により目標値よりも契約後の収入が減少するおそれや、契約後に赤字になるおそれ等を容易に予測出来たことから、その危険性について説明すべき義務があったにもかかわらず、Xらに対し正確な情報を提供をしなかったと認定し、その結果、Xらはその情報を知らされないままフランチャイズ契約を締結し、そして、その後結局Xらの経営する店舗は収支が悪化し、採算がとれず店舗を閉店せざるを得ない状況に陥っているのであるから、Y(担当者)の説明義務違反とXらの経営破綻との間には相当因果関係が認められると判示している。
また、裁判所は、過失相殺の判断に際して、各原告の経歴・属性の違いを重視し、Xらの過失相殺の割合に差をつけている。

解説

本件では、フランチャイズ本部からすれば、加盟希望者について、フランチャイズ契約後に経費の増大により目標値よりも収入が減少するおそれがあったことや、赤字になるおそれがあったこと等を「容易に予測出来た」と判示しています。そして、このことから、本部はその危険性について加盟希望者に説明すべき義務があったにもかかわらず、その義務に違反し、説明をしなかったと判示しています。

「容易に予測出来た」と判断したのは、本部が加盟希望者(原告2名)に提示した見積損益計算書について、ある数値は直営店時代の実績(2店舗は直営店を加盟店化した事情があります。)を用いていたが、その他の数値は本部が(直営店時代の実績や他のFC店の実績等をみれば)達成出来ないような目標値を設定していたことや、本部が加盟希望者(原告1名)に提示した予測値は、開業資金を自己資金で賄うことを前提としていたため、開業資金を借入金で賄うことになれば赤字になるおそれがあり、現に加盟希望者が借入によって賄おうとしていることを本部が知っていたこと等から、本部はフランチャイズ契約後の加盟店の収支が赤字になること等について十分予測することが可能だったと考えたからによります。

本件のように、フランチャイズ本部が、加盟店の収支を予測する際に、直営店の実績値をそのまま用いるのではなく、本部側で(加盟店の利益がより出る方向に)修正・加工した数値を用いて予測をたてる場合はよくあるので、本件はそのような場合の情報提供義務違反の有無に関し参考となる判例といえます。

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