指導援助義務違反 - フランチャイズトラブル事例

指導援助義務違反

私は、フランチャイザー(フランチャイズ本部)であるY社とフランチャイズ契約を締結し、居酒屋のフランチャイズ営業を開始しました。

これまで飲食事業の経験がなかったのですが、FC契約書では、開業前に店舗の運営管理を学ぶために必要な研修が行われ、開業後もY社の担当スーパーバイザー(SV)が毎週私の店舗を訪問して経営指導を行うということでした。また、Y社担当者の説明でも、そのような経営支援がシステムあるので、未経験の私でも店舗の運営管理は大丈夫であろうということで、フランチャイズ契約を締結しました。

ところが、フランチャイズ契約後に受けた開店前研修は、Y社の直営店のアルバイトと同様の仕事をひたすら続けさせられるだけで終わってしまい、店舗の運営や管理についてのノウハウの提供は全くありませんでした。

さらに、フランチャイズ店舗の開店後も、約束のスーパーバイザーによる毎週の経営指導は受けられず、スーパーバイザーが来店するのは半年に1回程度、しかも、来店時にやることと言えば、私とお茶を飲んで「がんばってください」などと精神論ばかりを披露して帰っていくだけという状況です。

また、スーパーバイザーのZ氏の打ち明け話によれば、Z氏自身、昨年Y社に入社したばかりの新入社員で、飲食業について特別な知識経験があるわけでもないので、あまり具体的なアドバイスはできないのだということでした。フランチャイズ契約についての経営指導というのは、この程度のものでも許されるのでしょうか。 

解説

1 指導援助義務

フランチャイズ契約は、フランチャイザーがフランチャイジー対し、契約の対象となっている事業についての経営ノウハウを提供することが、その契約の本質のひとつとされています。そして、そのような経営ノウハウは、マニュアル等の交付のほか、本部がフランチャイジーに対して実施する研修や、スーパーバイザーと呼ばれる経営指導担当者の個別指導によって提供されていくのが一般的です。

このようなことから、フランチャイズ契約においては、なんらかの形で、フランチャイザーのフランチャイジーに対する指導援助義務が定められているのが通常です。

2 指導援助義務の内容

フランチャイズ契約における指導援助義務の内容は、原則として、それぞれのフランチャイズ契約によって合意された内容に従って決まります。

そこで、通常は、フランチャイズ契約書が作成されていることから、まずは、フランチャイズ契約書によってフランチャイザーが提供するとされている義務の内容によってこれを確認することになります。

もっとも、フランチャイズ契約書の指導援助義務に関する条項の記載内容は抽象的なものであることも多く、このような場合、具体的な事案において、フランチャイズ本部の指導が契約上の義務に違反するかどうかについては、契約時のフランチャイズ本部による説明や、中小小売商業振興法11条1項に基づき交付された法定開示書面の内容等、様々な周辺事情を参考に判断していくことになります。

3 指導援助義務違反の場合の損害

フランチャイザーが本来果たすべき指導援助義務を果たしていないという場合、フランチャイザーは、フランチャイジー対し、そのような義務違反によってフランチャイジーに生じた損害を賠償する責任を負うことがあります。

その場合の損害については、諸説ありますが、経営ノウハウ提供の対価として支払った既払いロイヤリティの返還、あるいは、不十分な指導援助が寄与して悪化したFC店舗の損失部分などが考えられます。

4 本件の場合

本件の場合、契約時に約束されていた研修は提供されておらず、開店後のスーパーバイザーによる臨店指導も不十分であったものと考えられます。

また、そもそもSV自身が指導を行うに足りる知識経験を持ち合わせていなかったというような場合には、そのようなSVを派遣していたこと自体が契約上の指導援助義務違反に問われる場合もあります。

なお、本件については、指導援助の内容に関する不当勧誘の問題として争うことも考えられます。

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