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フランチャイズ加盟前にしておくべきこと

フランチャイズチェーンへの加盟を検討されている方に向けたメッセージです。

1 十分な情報開示を受け慎重な判断を

フランチャイズ契約は、これを上手く活用することによって、全く経験のない業界での事業をスムーズに開始することができるというメリットがあります。
しかし、フランチャイズ契約を締結する場合には、加盟金や保証金のみならず、店舗の取得費用、内装工事費、人材募集費など、多額の投資を必要とすることが多く、始めた事業がうまくいかない場合(いくら低リスクのフランチャイズであったとしても、社会情勢の変化や競合の出現など、予期せぬ事情によって事業が頓挫することはあり得ることです。)にはその投資の回収が困難になるというリスクもあります。この意味で、フランチャイズ加盟は、元本割れのおそれのある投資商品への投資と似たところがあると言うことができるでしょう。

そうである以上、フランチャイズへの加盟を検討している方は、本部から十分な情報開示を受け、自身でもできる限りの調査を行い、その収益の可能性及びリスクを十分に理解した上で、フランチャイズ加盟契約を締結するかの判断を行うようにしてください。もちろん、結果的に本部の情報提供が不十分だった場合には、法的責任追及をすることは可能な場合もあります。しかし、本部がそのような責任をはじめから素直に認めることは少なく、責任追及の場面では紛争となることは通常避けられません。

2 加盟検討段階で実践しておくべきこと

このような事態を避けるために、以下のような事項を実践することが有効でしょう。

・本部に紹介された以外の先行加盟店から話をよく聞く

既存の加盟店が存在するフランチャイズチェーンへの加盟を検討しているのであれば、先行して加盟した先輩オーナーの話を聞いてみるとよいでしょう。その際のポイントは、本部から紹介を受けた店舗ではなく、自ら選んだそれ以外の店舗を訪問することです。フランチャイズ契約の勧誘段階にあっては、フランチャイズ本部は業績優良店の情報を強調しがちであり、本部からの紹介店舗は必ずしもそのフランチャイズチェーン全体の平均的な姿と一致しているとはいえないためです。

・すぐに契約せず、ある程度の時間をおいて考える

フランチャイズ契約の加盟を検討している期間というのは、得てして、フランチャイズ本部からの説明を聞いて将来への夢が膨らみ、少しでも事業を開始したい気持ちが高まる余り、冷静な判断力を失っているということがあります。このため、どれだけ魅力的な契約勧誘の内容であったとしても、すぐに加盟契約に飛びつくのではなく、一定の時間をおき、さらに信頼できる周りの人物や専門家に相談をした上で、最終的な加盟の是非を判断すべきです。

・勧誘の際に提示された情報は書面で交付を受ける

フランチャイズ契約の加盟検討段階において本部から説明を受けた内容のうち、少なくとも重要な部分については、説明内容を記載した書面を受け取るようにしましょう。このような方法をとることにより、本部側が事実と異なる説明を回避しようとすることが期待できますし、仮に事実に反する説明がなされた場合でも、後日、根拠のない情報の提供を受けたということの証拠資料となる場合があります。
なお、中小小売商業振興法の適用対象となるフランチャイズチェーンにおいては、法律上、一定事項の書面による情報提供が義務づけられています。

・法定開示書面や契約書の内容をよく検討すること

フランチャイズ契約書は、ひとたびこれに署名押印をしてしまえば、本部と加盟店は原則としてその内容に法的に拘束されることになります。契約書の内容をよく読んでいなかったであるとか、契約書と異なる内容の口頭合意が存在したという事実があったとしても、裁判上でこのような事情を立証することは、全く不可能とはいいませんが相当の苦労が必要となります。このため、フランチャイズ契約書については、その内容を隅々までよく読み込み、不明な点は契約前に本部に確認するようにしてください。内容の理解に不安があれば、弁護士に相談して各契約内容の説明を受けておくことも有効でしょう。

また、中小小売商業振興法に基づく法定開示書面(「フランチャイズ契約の概要」等の名称で作成されることが多い)は、フランチャイズ契約を締結した場合にあなたが得られる権利に加え、フランチャイジーとして負うべき義務(禁止事項、支払べき金銭など)のポイントが記載されていますので、こちらもよく確認をしてください。

この記事を書いた弁護士

宮嶋弁護士

弁護士 宮嶋 太郎

1980年神戸市生まれ。2歳より静岡県に育つ。静岡県立韮山高校・東京大学法学部卒業。旧司法試験合格。弁護士登録後、10年以上フランチャイズ関連企業の相談や紛争処理業務にあたっている。セブンイレブン見切り販売妨害弁護団やベンチャーリンク関連弁護団等において、著名事件の代理人を務める。2012年には日本弁護士連合会消費者問題対策員会独禁法部会による米国フランチャイズ法制等調査団に参加。コンビニ・フランチャイズ問題弁護士連絡会事務局。弁護士法人ポート・虎ノ門事務所所長。

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