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FC契約の解除制限

当社は学習塾のフランチャイズチェーンに法人で加盟しています。5年前の加盟から順調に業績を伸ばし、現在10教室を運営するまでに成長しました。当社の加盟するFCチェーンでは、毎月末日の生徒数と選択科目を本部に報告し、それに基づいてロイヤリティが算定される仕組みとなっています。ところが、当社の運営教室のうちの1教室において、生徒数の集計ミスがあり、過去2ヶ月の報告が誤りであったことが判明しました。本部に申告したところ、契約解除しかないと言われて困っています。フランチャイズ契約書をみると、たしかに報告義務違反は催告なしで解除できるとの条項が含まれているようですが、本当に解除されてしまうのでしょうか。

フランチャイズ契約の解除には制限があります

フランチャイズ契約は、一回的な金銭と物のやりとりのような単発的取引ではなく、長期間にわたってフランチャイザーとフランチャイジー間に債権債務が発生することを前提とした継続的取引契約の一種です。

そして、このような継続的契約関係においては、当事者は契約の継続を期待して人的・物的な多額の投資を行うのが通常であり、こうした投資回収の期待の保護等の観点から、一般に、一方当事者からの契約の終了については一定の制限があるものと考えられています。

裁判例や学説により具体的な表現は様々ですが、共通しているのは、軽微な債務不履行(契約違反)が単発的にあった程度では、一方的な契約の解除の効力は認められないという点です。

相談例の場合

今回の相談例では、フランチャイズ本部が契約解除の理由としているのは、加盟者による各教室の生徒数の報告内容に事実と異なる部分があったという点ですが、これは有効な解除の理由となるでしょうか。

この点、今回のフランチャイズ契約のロイヤリティが月次の生徒数の報告をもとに算定される仕組みとなっていることからすると、たしかに、生徒数の報告義務はフランチャイズ契約上の重要な義務であり、加盟者には当然正確な報告が求められると考えられます。

しかしながら、今回のケースでは、報告に誤りがあったのは10教室中1教室であることや、その期間も2ヶ月と短いこと、報告内容を誤った理由も単純な計算ミスということを考慮すれば、このような債務不履行を理由とし、催告による是正の機会も与えずに直ちに契約解除が認められる可能性は低いものと思われます。

もっとも、報告内容の修正と、正確な生徒数をもとにした計算によれば不足するロイヤリティの追加納付の義務があることは当然ですので、加盟者側においては直ちにこれらの対応を行う必要があります。

フランチャイジーの対応方法

軽微な違反にもかかわらず、フランチャイズ本部が契約解除を主張してきた場合、加盟者側としては主に次のような方法で解決を図ることになります。いずれの場合にも、フランチャイズ契約に経験のある弁護士への相談が有益でしょう。

1 交渉による解決

まずは、フランチャイズ本部に対し、フランチャイズ契約の解除には制限があること、当該事案においては解除が有効となるほどの重大な違反行為はないことなどを説明し、契約継続への理解を求めることになります。

この交渉では、自己の法的地位を説明することはもちろん重要ですが、契約の継続を目指す以上、非を認めるべきところは認めて謝罪するなど、フランチャイズ本部との信頼関係を維持・回復することへの配慮も欠かせません。

2 法的手続による解決

交渉による解決が困難である場合、調停や仮処分、裁判といった法的手続きによって解決を図ることになります。このうち、調停は、裁判所を舞台とした話合いの手続きですので交渉の延長線上にあるとみることもできますが、その他の手続きは、法的な主張を双方が闘わせ、裁判所に契約解除が無効であるという判断を求めるものとなります。

フランチャイズ本部が、フランチャイズ加盟店の運営に必要な物品(販売用商品やオリジナル食材)や運営に必要なシステムの提供を一方的に停止した場合には、仮処分や訴訟手続きを利用してフランチャイズ契約上の地位確認を求めていく方法のほか、一度は任意に閉店手続きをした上で、逸失利益等の損害賠償請求を行うという方法もあります。

この記事を書いた弁護士

宮嶋弁護士

弁護士 宮嶋 太郎

1980年神戸市生まれ。2歳より静岡県に育つ。静岡県立韮山高校・東京大学法学部卒業。旧司法試験合格。弁護士登録後、10年以上フランチャイズ関連企業の相談や紛争処理業務にあたっている。セブンイレブン見切り販売妨害弁護団やベンチャーリンク関連弁護団等において、著名事件の代理人を務める。2012年には日本弁護士連合会消費者問題対策員会独禁法部会による米国フランチャイズ法制等調査団に参加。コンビニ・フランチャイズ問題弁護士連絡会事務局。弁護士法人ポート・虎ノ門事務所所長。

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