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裁判以外の方法による加盟店からの債権回収

飲食業のFC本部を経営しています。当チェーンでは、加盟店に対する食材供給を行っていますが、ある加盟店からの売買代金の支払いが滞っています。現時点で150万円分ほどの滞納額となっており、債権回収に不安があるのですが、できれば裁判はしたくありません。裁判以外にどのような債権回収方法があるか教えて下さい。

裁判による債権回収のコスト

多数の加盟店との取引を行うフランチャイズ本部にとって、加盟店からの債権回収は悩みの種となりがちです。個々の債権は少額でも、多数の加盟店からの支払が滞れば、フランチャイザーの財務に重大な影響を及ぼすこともあります。

債権回収といえば、弁護士に依頼して裁判を起こすという方法がまず思い浮かぶでしょう。しかし、裁判による債権回収は、時間面・金銭的コスト(弁護士費用など)・労力面(打ち合わせや証拠収集の労力)など、多大なコストが必要となります。

もちろん、最終的には裁判を行うしかないというケースはありますが、今回は、できるだけ裁判手続きを使わずに、フランチャイズ本部が加盟店からの債権回収を実現する方法を紹介します。

■交渉による回収

加盟店オーナーと話合い(交渉)をして、滞納を解消するための返済計画を立てさせ、それに従った支払を受けて回収する方法があります。フランチャイズ契約の継続が前提の交渉であれば、加盟者側も応ずることが多いでしょう。

また、フランチャイズ契約に関して、連帯保証人がいる事案では、連帯保証人との交渉により、保証債務の返済を受けるという方法も考えられます。

なお、交渉により取り決めた返済計画については、その内容について強制執行受諾文言付の債務弁済公正証書を作成するなどして、債務不履行が発生した場合には裁判をせずとも強制執行できるようにしておくと安心です。

■保証金からの回収

フランチャイズ契約に際し、加盟店からFC保証金を預かっている場合には、この保証金から滞納額を差し引くことによって債権回収を図るという方法があります。滞納額が多額であり、フランチャイズ契約を終了せざるを得ないような場合には、こうした方法が有効です。

もっとも、保証金に比べて滞納額が大きい場合には、全額の回収ができないということになります。フランチャイズ本部としては、「保証金があるから安心」とは考えず、こまめに加盟者に対する債権の管理を行うことが重要です。

■譲渡担保権の実行

小売業など、店舗在庫のあるフランチャイズチェーンなどでは、加盟店の在庫商品等について予め譲渡担保権を設定しておき、フランチャイズ本部に対する支払が滞った場合に譲渡担保権を実行することにより債権回収を行うという方法もあります。

具体的には、フランチャイズ本部から加盟店に対する譲渡担保権の実行通知を行い、担保目的物を処分等した上で、売却代金(あるいは適正な評価額)と債務額との差額を清算するというのが一般的な流れとなります。

在庫商品を目的物とする譲渡担保権が実行されると、加盟店は営業継続が不可能となるケースがほとんどですので、フランチャイズ契約の終了が前提ということになるでしょう。

■その他 - 預かり金との相殺による回収

フランチャイズ本部が加盟店舗での売上金を一度預かる方式を利用しているFCチェーンでは、常時、フランチャイズ本部から加盟者に対する一定の預かり金債務が存在することになります。

このような場合には、加盟店に対する預り金返還債務と加盟店に対する供給商品代金債権を相殺することで、加盟店への債権を回収することができます。

これは、売上金の管理方法を契約上工夫することにより、そもそも加盟店の滞納額を発生させないための仕組みということができるでしょう。

この記事を書いた弁護士

宮嶋弁護士

弁護士 宮嶋 太郎

1980年神戸市生まれ。2歳より静岡県に育つ。静岡県立韮山高校・東京大学法学部卒業。旧司法試験合格。弁護士登録後、10年以上フランチャイズ関連企業の相談や紛争処理業務にあたっている。セブンイレブン見切り販売妨害弁護団やベンチャーリンク関連弁護団等において、著名事件の代理人を務める。2012年には日本弁護士連合会消費者問題対策員会独禁法部会による米国フランチャイズ法制等調査団に参加。コンビニ・フランチャイズ問題弁護士連絡会事務局。弁護士法人ポート・虎ノ門事務所所長。

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