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フランチャイズ加盟事業を法人化するメリット・デメリット

美容室の加盟店オーナーをしています。3年前に個人事業としてフランチャイズに加盟し、現在、3店舗の美容室を経営しています。利益の額も大きくなってきたことや、消費税の問題もあることから、そろそろ会社を設立し、事業を法人化したいと考えていますが、法人化にはどのような長所と短所がありますか。

事業の法人化をお考えの加盟店オーナーの方へ

個人としてフランチャイズに加盟して数年が経ち、2号店や3号店も出店するなど事業が拡大しつつあるフランチャイズオーナーの多くは、それまで個人事業として経営してきたFC事業法人化を検討されています。通常は、株式会社を新たに設立し、当該会社にこれまでの事業を移管することになるわけですが、このような場合、どのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。

そこで、今回は、フランチャイジーが法人化する場合の考慮要素について弁護士が解説します。

法人化のメリット

税務面

法人税の最高実効税率は所得税のそれよりも低いことから、利益が高額となってきている事業体においては、節税のメリットがあるということになります。また、家族が加盟事業を手伝っている場合には、青色事業専従者の届出などをせず自由に給与を支払うことができるため、所得分散を図ることが可能です。事業主の給与(役員報酬)にも、給与所得控除が適用されます。

信用力の強化

取引先や金融機関からの信頼が高まり、資金調達や顧客の獲得において有利になると考えられます。もっとも、フランチャイズ事業(の特に集客面)では、加盟者は本部のブランド力に依拠し、加盟者が法人化どうかが前面でることは少ないと思われるため、一般の事業者に比べるとこの要素の重要性は低いかもしれません。

法人化のデメリット

事務負担の増加

設立手続きや役員選任の商業登記が必要になる、経理処理や税務申告の内容が複雑化するなど、個人事業の場合と比べると事務処理上の負担は確実に増加します。また、これをアウトソーシングする場合には、その分の経費負担が増加することになります。

金銭面での負担増

社会保険への加入が強制されるため、社会保険料の法人負担部分については事業主側の負担が増加します(もっとも、福利厚生という側面では、社会保険への加入はメリットという見方もできるでしょう。)。また、法人の損益にかかわらず支払う必要のある、法人都道府県民税・法人市町村民税の均等割部分の負担などがあります。

まとめ

一般に、個人事業を法人化することによるメリットやデメリットとしては、以上のような事項が挙げられます。

加盟店オーナが置かれている個々の状況や将来の展望などによって、どの要素を重視すべきかはそれぞれ異なることになるでしょう。「所得が500万円を超えたら法人化」などという言葉も聞かれますが、事業規模が大きくなったから単純に法人化というわけではなく、具体的な事情に応じた判断が必要です。

また、法人化を決断した場合、会社の設立手続きはもちろんのこと、フランチャイズ本部との調整(契約上の地位の移転等)や、賃貸借契約関係の処理など、様々な法律事務処理が必要となりますので、法人化の是非の判断を含め、弁護士などの専門家に相談することが有効でしょう。

この記事を書いた弁護士

宮嶋弁護士

弁護士 宮嶋 太郎

1980年神戸市生まれ。2歳より静岡県に育つ。静岡県立韮山高校・東京大学法学部卒業。旧司法試験合格。弁護士登録後、10年以上フランチャイズ関連企業の相談や紛争処理業務にあたっている。セブンイレブン見切り販売妨害弁護団やベンチャーリンク関連弁護団等において、著名事件の代理人を務める。2012年には日本弁護士連合会消費者問題対策員会独禁法部会による米国フランチャイズ法制等調査団に参加。コンビニ・フランチャイズ問題弁護士連絡会事務局。弁護士法人ポート・虎ノ門事務所所長。

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