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店舗の立ち退き請求への対応方法

当社はラーメン店のフランチャイズチェーンを運営しています。先日、直営店が入居している賃貸ビルのオーナーから、「次回の契約更新はできないので立ち退いて欲しい」との申し出を受けました。この店舗は2年前にオープンしたばかりで、内装に投じた1500万円程度の投資も未回収ですし、何より近隣に代替物件が見つかるかもわかりません。それでもやはりオーナーの要求に応じなければならないでしょうか。

店舗を構えてフランチャイズ事業を行うタイプのFCチェーンでは、賃貸借契約を締結して店舗物件を確保していることが通常ですが、賃貸人の事情によって、営業継続中に店舗からの立ち退きを求められることがあります。しかし、店舗型のフランチャイズ事業では、当該立地からの移転を強いられることによって、移転費用や移転後の売上など、さまざまな損失が発生する可能性があります。

そこで、今回は、主に飲食業の店舗展開をしている事業者の方に向けて、こうした損失をできるかぎり少なくするための、不動産賃貸人からの立ち退き請求に関する法律知識を弁護士が解説します。

立ち退き問題の法律

建物賃貸借における賃貸人(貸主)からの契約終了については、原則として、借地借家法による以下のような規制があります。

【期間満了時の更新拒絶の場合】

期間の定めがある建物賃貸借契約について、契約期間の満了後更新をしない場合には、賃貸人において期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に更新拒絶通知を行う必要があります。

また、この更新拒絶通知は、いかなる場合にも効力が認められるものではなく、借地借家法に定める「正当事由」が必要であるとされています。

【賃貸借契約期間中の解約申し入れの場合】

建物賃貸借契約に期間の定めがあり、契約条項に中途解約条項も含まれていない場合には、そもそも期間中の解約申し入れはできません。

また、建物賃貸借契約に期間の定めがない場合や、契約期間中の中途解約条項がある場合の賃貸人からの解約申し入れについても、借地借家法に定める「正当事由」が必要とされています。

■定期借家契約の場合

以上に対し、入居物件についていわゆる定期借家契約が締結されている場合(大型SCなどの商業施設では定期借家契約となっている例が多いです。)には、賃貸借契約の更新拒絶や解約申し入れに「正当事由」が必要であるとはされておらず、この意味で普通借家に比べ賃借人の地位は弱いものとなります。また、一時使用目的の建物賃貸借契約についても、借地借家法による上記規制の適用はありません。

正当事由と立ち退き料について

借地借家法にいう「正当事由」の有無は、法律上、次のような事情を考慮して判断されるものとされています

  • 賃貸人・賃借人が建物の使用を必要とする事情
  • 建物賃貸借に関する従前の経過
  • 建物の利用状況及び建物の現況
  • 立ち退き料

このうち、判断の基本となるのは当事者双方が建物の使用を必要とする事情であるとされており(したがって、賃貸人の使用の必要性が著しく低い場合にはその時点で正当事由なしとなります。)、最終的な判断の補完的な要素として立ち退き料の額が考慮されるということになります。

もっとも、補完的要素とはいわれつつも、実際の事案で立ち退き料なしに正当事由が認められるケースは少なく、移転補償や営業補償等を考慮した立ち退き料が支払われるケースが大半です。

立ち退き問題解決の流れ

相談例のケースを前提に、賃借人(テナント)の立場から、立ち退きトラブル解決の一般的な流れをみていきましょう。

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1 立ち退き通知

賃借人から、期間満了通知や解約通知が届いた場合(不動産業者等を介して交付されることもあります。)には、まず通知内容と賃貸借契約書をよく確認します。家賃滞納などの契約違反による解除を理由とする立ち退き請求でない限り、即時の立ち退きが必要となることは原則としてありませんので、慌てずに対応してください。この段階で弁護士に相談されることをお勧めします。

2 賃貸人との交渉

賃貸人が立ち退きを求める理由(自己使用・老朽化による耐震強度不足・再開発など)を検討し、賃借人(テナント)としての対応方針を決定し、これに従った交渉を行います。事案により、立ち退き自体を拒否して正当事由の有無を徹底的に争うケースもあれば、立ち退き料の金額を争点とするケースもあります。

3 調停・訴訟

裁判所外の交渉による解決が困難である事案では、主として賃貸人側の申立てにより、調停や訴訟といった裁判所での手続きによる解決を図ることになります。訴訟手続きでは、原告・被告の双方が主張立証を行い、最終的には裁判所の判決により結論が示されます。

まとめ - 弁護士への早期相談の重要性

フランチャイズ店舗の立ち退き問題は、FC本部の直営店でも加盟店でも起こりうる問題でですが、賃貸人は、立ち退き請求を一度受けると、新規の投資や大規模な広告宣伝を行いにくくなるなど事実上不安定な立場に置かれることになるため、十分な検討や調査をせずに交渉を急いでしまう例がよくあります。

しかし、賃借人が適切な補償を得るためには、専門家への相談なく借地借家法における正当事由について独自の判断を行うことは危険であり、大きなリスクがあります。この意味で、立ち退き請求を受けた事業者の方は、できるだけ早期の段階で、弁護士への相談をすることをお勧めします。

この記事を書いた弁護士

宮嶋弁護士

弁護士 宮嶋 太郎

1980年神戸市生まれ。2歳より静岡県に育つ。静岡県立韮山高校・東京大学法学部卒業。旧司法試験合格。弁護士登録後、10年以上フランチャイズ関連企業の相談や紛争処理業務にあたっている。セブンイレブン見切り販売妨害弁護団やベンチャーリンク関連弁護団等において、著名事件の代理人を務める。2012年には日本弁護士連合会消費者問題対策員会独禁法部会による米国フランチャイズ法制等調査団に参加。コンビニ・フランチャイズ問題弁護士連絡会事務局。弁護士法人ポート・虎ノ門事務所所長。

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